こんにちは、ゆうペイです!
この記事は、職人を辞めてひとりで仕事を請ける働き方(個人事業主)を考えている人に向けた話です。
一人親方として現場に出る人も、軽貨物の配送や業務委託など、別の仕事でひとり立ちする人も同じです。
会社員のときは、健康保険や年金、雇用保険、労災の手続きを会社がしてくれていました。
個人事業主になったら自分で何をするのかは、意外とはっきりしないものです。
心の声
ひとりでやれば、給料から引かれていた保険料がなくなって、手取りが増えるはず。

そう思いますよね。
ただ、引かれる分がなくなる代わりに、自分で払う保険料が出てきます。ひとり身なら少なくなることもありますが、家族がいると増えることもあります。
それより大きいのが、会社員だから受け取れていたお金が、減ったりなくなったりすることなんです。
☝️結論から言うと、個人事業主になると、次の3つが変わります。
① 健康保険と年金は、自分で入り直す(払う額は、家族や所得で上がりも下がりもする)
② 失業保険と傷病手当金(働けないあいだの生活費)は、ふつうはなくなる
③ 労災は、自分で入らないとない
辞める前に、払う保険料と受け取れなくなるお金の両方を確かめておきます。
この記事では、職人を辞めて個人事業主になる人向けに、
- 会社員と個人事業主で、保険料と受け取れるお金がどう変わるか
- 健康保険・年金・失業保険・労災の切り替え方
- 知らないまま辞めると困ることと、防ぎ方
☝️の3つを、順番にお伝えします。
辞める日と、ひとりで仕事を始める日を決める前に読んでみてください。
会社員と個人事業主で変わる、保険料と受け取れるお金
会社員の保険と個人事業主の保険は、仕組みそのものが違います。
まず、払う額を年金で比べてみます。
この月30万円の例では、ひとり身なら1人分の年金保険料は少なくなります(給料によっては逆になります)。
反対に、家族を扶養していると、国民年金にも国保にも扶養の考え方がないので、家族の分もかかります。
国保も、加入する人数に応じて保険料が増える仕組みです。
ただ、保険料の差より大きいのは、受け取れるお金の差です。
会社員の保険は、保険料が多いぶん、病気やケガ、失業、老後に受け取れるお金も多くなっていました。
場面ごとに比べると、次のとおりです。
個人事業主になると、減ったりなくなったりするお金の分を、自分でどう備えるかを考えることになります。
会社員の手取りと比べるときも、保険料だけでなく、受け取れなくなるお金まで入れて比べます。
👉 職人の給料が安くて辞めたい人へ。辞める前に手取りを比べよう


健康保険と年金は、自分で入り直す
健康保険は、4つから選ぶ
会社を辞めると、会社の健康保険から抜けます。
次の健康保険は、次の4つから選びます。
| 選べる先 | 期限と保険料 |
|---|---|
| 市区町村の国保 | 届け出は辞めた翌日から14日以内。保険料は前の年の所得などで決まる(市区町村で違う) |
| 任意継続 (辞めたあとも会社の健康保険を続けること) | 辞めた日まで2か月以上続けて入っていた人が、辞めた翌日から20日以内に申し込む。最長2年。保険料は辞める前に引かれていた額の原則2倍(上限あり) |
| 家族の扶養 | 家族の勤め先で手続き。保険料はかからないが、収入の条件がある |
| 建設国保 (建設業でひとり立ちする人) | 組合ごとの条件を満たせば入れる場合がある。保険料も組合ごと |
※任意継続の保険料が2倍になるのは、会社員のときに会社が払う決まりだった分も、自分で払うためです。辞めた最初の年は前の年の給料で国保の保険料が決まるので、高くなりやすいです。2026年10月時点の協会けんぽ・各市区町村の案内より。
どれが安いかは人によって違うので、辞める前に聞いて比べます。国保の保険料は市区町村で、任意継続の保険料は協会けんぽで聞けます。
国保の手続きでは、会社の健康保険を抜けた日が分かる書類が要るので、早めに会社に頼んでおきます。
今が建設国保の人は、辞めたあとの働き方を今の組合に伝えて、続けられるかと手続きを確かめます。
会社への頼み方(例)
国保の手続きで使うので、健康保険の資格喪失証明書と離職票は、いつごろもらえますか?
辞める日が決まったら、最後の出勤の前に聞いておくと安心です。
健康保険の種類ごとの見分け方や、辞めたあとの切り替えは、こちらに詳しくまとめています。
👉 自分の健康保険はどれ?職人が見分ける4種類と、辞めたら変わること
年金は、国民年金に切り替える
20歳以上60歳未満の人は、厚生年金から国民年金に切り替えます。
手続きは、住んでいる市区町村の役所で、辞めた翌日から14日以内です。
自分の扶養に入っていた配偶者が20歳以上60歳未満なら、その人も国民年金への切り替えが要ります。
※反対に、辞めた本人が、厚生年金に入っている配偶者の扶養に入れる場合は、自分で年金の保険料を払わない扱いもあります(収入の条件があります)。この年金の扶養(第3号)は、健康保険の「家族の扶養」とは別の扱いで、手続きは配偶者の勤め先を通して行います。2026年10月時点の日本年金機構の案内より。
個人事業主のあいだは、厚生年金の上乗せが積み上がらないので、そのぶん将来の年金は少なくなります(会社員のときに払った厚生年金の分は消えません)。
払うのが難しいときは、そのままにせず、免除や納付猶予を申し込めます。退職したことを理由にした特例の免除もあります。
年金だけでは老後のお金が心配な人は、自分で積み立てて備える方法もあります。
たとえば、退職金のように将来まとまったお金を用意しておきたい人には、NISA(投資の利益に税金がかからない国の制度)やiDeCo(自分で積み立てて運用する年金)などの積み立ても選択肢になります。
会社員のままでも、個人事業主になっても、使える仕組みです。
※NISAは投資なので、元本を下回ることがあります。iDeCoも選ぶ商品によっては、積み立てた額を下回ることがあります(定期預金などの商品もあります)。iDeCoは原則60歳まで引き出せません。国民年金の保険料の免除などを受けている人は、原則としてiDeCoには入れません(障害基礎年金を受けている人などは別です)。2026年10月時点の金融庁・iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)の案内より。
また、国保には、病気やケガで働けないときのお金(傷病手当金)がふつうありません。
辞める前から体の具合が悪い人は、辞める日の動き方で受け取れるお金が変わるので、先にこちらを読んでおいてください。
独立すると、失業保険はどうなる?
個人事業主は雇用保険に入れないので、ひとりでやってみてうまくいかずにやめても、そのときの失業保険はありません。
会社を辞めたときの失業保険は、仕事を探している人のお金です。
開業したり、開業の準備に専念し始めたりすると、失業保険は受け取れなくなります。
仕事を探しながら独立を考えている段階なら、受け取れる場合もあります。
会社を辞めたときの失業保険には、使い道が2つあります。
開業で再就職手当をもらうには
再就職手当(早く次を決めた人がまとめてもらえるお金)は、開業した場合も対象です。
ただし、いつ自営を始めるかで、もらえるかどうかが変わります。
手続き上の「自営を始めた日」は、実際の開業日より前の、準備に専念し始めた日になることがあります。この日付は、待つ期間や申請の期限に関わるので、先にハローワークで確かめます。
金額の目安は、ハローワークの案内の例で、1日あたりの金額が4,000円・90日分の人が、まだ1日も受け取っていなければ、4,000円×90日×70%=252,000円です。
失業保険の条件や、受け取れる期間ののばし方は、雇用保険の記事にまとめています。
👉 職人が辞めたら雇用保険はどうなる?入っているかの確かめ方と、もらえるお金
労災は、自分で入らないとない
会社員の労災は、会社が保険料を全部払って入っていました。
個人事業主は、そのままでは労災の対象になりません。
入るには、個人事業主が入る労災(特別加入)に、団体を通して申し込みます。
どの団体に申し込むかは、仕事の種類で決まります。
フリーランスの特別加入は、2024年11月から、会社などから仕事を受けている人なら業種を問わず入れるようになりました。
ただし、お客さんが一般の個人だけの人は対象外です。
建設の一人親方や配達の仕事のように、ほかの特別加入に当たる仕事の人は、その仕事の団体に申し込みます。
もう1つ大事なのが、入れる日です。
団体に申し込んだ翌日に、必ず補償が始まるわけではなく、入る前に起きたケガは対象になりません。
だから、労災は、仕事を始める日より前に申し込み、加入が始まる日を団体に確かめます。
※建設国保の組合の中には、仕事中のケガには組合の保険は使えないと案内しているところもあります(東京土建国保)。仕事中のケガの扱いは、入っている健康保険に確かめてください。


税金の届け出も、自分でする
会社員のときに会社がしていた年末調整はなくなり、毎年の所得の申告(確定申告)を自分でします(所得などによっては要らない年もあります)。
開業したときの届け出は、次のとおりです。
| 届け出 | 期限 |
|---|---|
| 開業届 (個人事業の開業届出書) | 開業した年の確定申告の期限まで。再就職手当の申請で、開業した日を示す書類にも使う |
| 青色申告の申請 (使う人だけ) | 開業した年から使うなら、1月1日〜15日に開業した人はその年の3月15日まで、1月16日以後に開業した人は開業した日から2か月以内 |
※出す先は税務署です。2026年10月時点の国税庁の案内より。届け出の書き方や、青色申告にするかどうかは、税務署や税理士に相談できます。
もう1つ、住民税も確かめておきます。
住民税は前の年の所得で決まるため、辞めて収入が減っても、会社員だったときの給料に対する支払いが、次の6月ごろから届きます。
残っている支払いと、次の6月からの見込み額を、住んでいる市区町村で確かめておきます。
辞めたあとに来る住民税の数え方は、こちらにまとめています。
👉 退職後の住民税はいつ・いくら払う?職人が辞める前に確かめる税金と保険料
知らないまま辞めると、あとから困ること
保険や年金のことを知らないまま個人事業主になると、気づかないうちに次のようなことが起きます。
どれも、辞める前に知っておけば防げます。
☝️困るのは、会社がしてくれていた手続きが自分の番になったと知らずに辞めたときです。
辞める前に順番を決めておけば、ほとんどは防げます。
辞める前に確かめておくこと
分からないことは、次のところで聞けます。
| 知りたいこと | 聞く先 |
|---|---|
| 国保・国民年金の手続きと保険料 | 住んでいる市区町村の役所 |
| 任意継続の保険料 | 協会けんぽの支部(会社の健康保険組合の人はその組合) |
| 失業保険・再就職手当・受け取れる期間ののばし方 | 住んでいる地域のハローワーク |
| 労災の特別加入 | 仕事に合う特別加入の団体・労働基準監督署 |
| 開業届・青色申告 | 税務署 |
まとめ:個人事業主になる前に、保険料と受け取れなくなるお金を確かめよう
😣 確かめずに辞めると
・家族の分の保険料に、辞めてから気づく
・労災に入る前にケガをする
・失業保険や再就職手当をもらい損ねる
😊 確かめてから辞めると
・本当の手取りで会社員と比べられる
・仕事を始める日から、労災に入っている
・失業保険を損のない順番で使える
- 健康保険と年金は、自分で入り直す。保険料は人によって上下し、差が大きいのは受け取れるお金
- 国保と国民年金は14日以内に手続きする。会社の健康保険に残る(任意継続)なら、健康保険の手続きは20日以内
- 失業保険と労災は、自営を始める日の前に確かめる(ハローワークと特別加入の団体で)
保険料の額や細かい決まりは、これからも変わっていきます。
でも、「会社がしてくれていたことを、辞める前に自分の手順にしておく」ことは変わりません。
☝️今日やることは1つだけです。
給与明細で、健康保険と厚生年金が毎月いくら引かれているかを見る
国民年金(1人月17,920円)と、市区町村で聞いた国保の見込み額と並べると、家族の分も含めて上がるか下がるかが分かります。



保険料と受け取れなくなるお金が分かれば、ひとりでやるのにいくら売上が要るかが見えてきます。
独立したあとの売上から、経費・税金・保険料を引いて、今の手取りと比べてみてください。
今の手取りの出し方と、ほかの仕事との比べ方は、こちらにまとめています。
👉 職人の給料が安くて辞めたい人へ。辞める前に手取りを比べよう
辞める前の準備は7つにまとめているので、できるところから始めてみてください。
👉 辞める前の準備7つを見る
2026年10月時点の公式ページをもとにしています。保険料や決まりは変わることがあるので、最新の内容は各窓口で確かめてください。
- 日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」(自営業者になった場合は第1号・扶養されていた配偶者も第1号の手続き・配偶者の被扶養者となる場合は第3号・免除と失業等による特例免除)
- 日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」(手続き先は住所地の市区役所または町村役場・退職日の翌日から14日以内)
- 日本年金機構「国民年金保険料」(令和8年度は1か月17,920円)
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」(未納だと障害基礎年金を受け取れない場合がある・事故や病気のあとにさかのぼって申請しても納付要件に算入されない)
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」(事業主と被保険者が半分ずつ負担・保険料率18.3%)
- 厚生労働省「窓口負担割合等のご相談窓口について」(窓口負担は69歳までは3割)
- 協会けんぽ「傷病手当金」(1日あたり標準報酬月額の平均÷30×3分の2・通算1年6か月)
- ハローワーク「基本手当について」(1日あたりの金額は賃金日額の約50〜80%・60〜64歳は45〜80%・年齢ごとの上限あり)・「基本手当の所定給付日数」(90〜330日)
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」(老齢基礎年金の満額は月70,608円・昭和31年4月2日以後生まれ)
- 日本年金機構「障害年金」(初診日に国民年金なら障害基礎年金〈1級・2級〉・厚生年金なら障害厚生年金が上乗せ・2級に当たらない軽い障害は3級の障害厚生年金・さらに軽い障害は障害手当金〈一時金〉)
- 大阪市「保険料の決め方」(国保料は世帯ごとの平等割・被保険者の人数に応じた均等割・前年の所得に応じた所得割)
- 金融庁「NISAを知る」(少額投資非課税制度・運用益が非課税)
- iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)「iDeCoの特徴」(自分で拠出した掛金を自分で運用する年金・60歳になるまで原則引き出せない・元本確保型の商品もあるが投資信託等は元本を下回る可能性)
- 協会けんぽ「任意継続」(退職日の翌日から20日以内・2年間・保険料は退職前に控除されていた額の2倍〈上限あり〉・事業主負担分も負担・被扶養者の保険料負担はない・国保の保険料は加入する世帯の人数や前年の所得などで決まる)
- 横浜市「退職後の住民税は…」(住民税は前年の所得をもとに翌年6月から・退職後も前年の給与に対する納税通知が届く)
- ハローワーク「再就職手当のご案内」(LL080801保02・令和8年8月)(事業を開始した場合も対象・待期7日満了後・支給残日数3分の1以上・給付制限がある方は自営も待期満了後1か月経過後から・過去3年以内の受給なし・残日数の60%か70%・計算例252,000円)
- 岡山労働局「自営開始を予定している方へ」(R6.9)(自営業〈準備を含む〉を始めると失業の状態を満たさない・申し出・開業届の控えで自営開始日を申告・再就職手当の申請は自営開始日の翌日から1か月以内・事業実態の書類)
- 兵庫労働局「雇用保険の失業給付を受給される皆さんへ」(自営を開始、または自営準備に専念する方は受給できない・求職活動中に創業の準備や検討を行う方は支給可能な場合がある・受給期間の特例は事業の準備に専念し始めた日も対象)
- 兵庫労働局(ハローワーク尼崎)「雇用保険受給中の手続き」(自営専念〈業務委託を含む〉が決まったときの届け出)
- 厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)」(Q18・Q19=事業を開始した場合の受給期間の特例)
- ハローワーク「不正受給の典型例」(返還に加えて最大2倍の納付命令)
- 厚生労働省「各労災保険給付の支給事由と内容について教えてください」(療養補償給付=必要な療養の給付・休業4日目から給付基礎日額の60%+休業特別支給金20%)
- 厚生労働省「令和6年11月1日から『フリーランス』が労災保険の『特別加入』の対象となりました」(企業等から業務委託を受けるフリーランスは業種・職種を問わず対象・消費者のみから受けている方は対象外・ほかの特別加入の事業に当たる方はその団体へ)
- 厚生労働省リーフレット「フリーランスの皆さまも、特別加入により労災保険の補償を受けられます!」(年間保険料=給付基礎日額×365×0.3%・例:日額1万円で10,950円)
- 連合フリーランス労災保険センター「費用について」(費用の一例:労災保険料のほかに年会費・入会金がかかる)
- 厚生労働省「特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)」(承認は申請の日の翌日から30日以内で加入を希望する日・給付基礎日額3,500〜25,000円・建設の事業17/1000・自動車や自転車を使う貨物運送など11/1000・日額1万円で62,050円/40,150円)
- 東京土建国保「仕事中・通勤途中にけがなどをしたとき」(労働災害には国保組合の保険給付は使えない・一人親方も特別加入できる)
- 国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」(事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出)
- 国税庁「所得税の青色申告承認申請手続」(青色申告をしようとする年の3月15日まで・1月16日以後に開業した場合は開業の日から2月以内)
- iDeCo公式サイト「iDeCoの加入資格・掛金・受取方法等」(保険料を免除されている人は加入対象外・障害基礎年金を受けている人などは加入できる)
- 福井労働局「給付基礎日額」(原則は3か月の賃金総額を暦の日数で割る・日給や時間給などは最低保障と比べて高いほう)
- 国税庁「確定申告」(所得などによっては確定申告をしなくてもよい場合がある)



